分子標的治療薬は腫瘍内で特定の遺伝子やたんぱく質の変化が確認された患者にのみ効果があるため、治療薬を決める前に組織や血液でバイオマーカー検査を先に受けます。検査結果なしに標的治療薬を選ぶことはありません。
要点まとめ
- バイオマーカー検査とは、がん細胞の遺伝子・たんぱく質の変化を調べて治療選択の参考にする検査で、固形がんでは手術や組織検査で得た組織を、血液がんや液体生検では採血によって調べます(米国国立がん研究所 NCI)。
- 分子標的治療薬は該当する標的を持つ患者にのみ効果があるため、非小細胞肺がんはEGFR・ALK・ROS1、胃がんはHER2・CLDN18.2、乳がんはHER2とホルモン受容体、大腸がんはRAS・BRAFを確認してから薬剤を決定します(国家がん情報センター)。
- バイオマーカー検査はすべての患者に必要というわけではなく、転移・再発したがんでよく勧められ、非小細胞肺がん・乳がん・大腸がんなど一部のがんでは日常的に実施されています(NCI)。
- 組織の採取が難しい場合は血液から腫瘍DNAを調べる方法を用いることもあり、検査結果が出るまでは項目によって数日から2〜3週間かかります。
- 現地で受けた遺伝子検査が直近のもので項目も十分であればそのまま活用し、不足している場合は組織スライドを送付して韓国で再検査するか、入国後に検査を行います。
遺伝子検査とバイオマーカー検査は同じものですか?
- 異なります。遺伝する変異を調べる遺伝子検査とは違い、バイオマーカー検査はがん細胞自体の遺伝子・たんぱく質の変化を調べて治療選択の参考にする検査です(NCI)。
- がん細胞は正常な細胞の増殖シグナルが異常をきたすことで生じますが、その異常が起きる場所は腫瘍ごとに異なります。ある肺がんではEGFR受容体が常に活性化しており、ある胃がんではHER2たんぱく質が過剰に発現しています。分子標的治療薬はその異常箇所をピンポイントで抑える薬であるため、異常のない患者には同じ薬がほとんど効きません。
- そのため、同じがんでも隣の患者は改善し自分は変わらないという状況の多くが、バイオマーカーの違いによって説明されます。
検査はどのような順序で進みますか?
- 第1段階 — 組織スライドやパラフィンブロックを用いて免疫組織化学検査および遺伝子検査を行います。
- 第2段階 — 必要に応じて次世代シーケンシング(NGS)により複数の変異を一度に確認します。
- 第3段階 — 組織の採取が難しい場合は、血液から腫瘍DNAを調べる液体生検の方法を検討します。
- 第4段階 — 結果(数日〜2〜3週間かかります)をもとに該当する標的の有無を確認し、あればそれに合った分子標的治療薬を、なければ細胞毒性抗がん剤・免疫治療・手術・放射線など他の選択肢を検討します。
- 第5段階 — 治療中に薬剤が効かなくなった場合は、再度検査を行ってどのような変化が生じたかを確認し、次の薬剤へ移行するのが一般的な流れです。
よくある質問 — 治療前にほかに何を準備すればよいですか?
病期は画像検査・組織検査・血液検査を総合して判定され、最も広く用いられるTNM分類は腫瘍の大きさと広がり(T)、周囲リンパ節への転移(N)、他部位への転移の有無(M)を見ます(NCI)。バイオマーカー検査とあわせて治療計画を立てる基本資料となります。化学療法を計画する際は、がんの種類・進行度・これまでの治療歴、糖尿病や心臓病といった併存疾患も併せて考慮します(NCI)。
よくある質問 — 海外ですでに受けた検査結果も使えますか?
直近のもので項目も十分であればそのまま使用できます。結果がない、古い、または必要な項目が欠けている場合は、組織スライドを送付して検査するか、入国後に改めて検査します。現在服用中のすべての薬(血液をさらさらにする薬、糖尿病薬など)や健康食品・漢方薬についても、成分名とともに必ず医療スタッフに伝えてください(NCI)。事前レビューの費用は100万ウォン(約11.5万円)で、事前レビュー後に治療契約を結んだ場合、この金額は診療費から差し引かれます。
出典と留意事項
- 本記事は「治療前に確認すべきこと」「分子標的治療ノート」(国家がん情報センター、NCCN患者向けガイドライン、米国国立がん研究所 NCI)を参考に作成しました。
- 本コンテンツは一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の状態により診断・治療方法および結果は異なる場合があります。正確な診断と治療については、必ず医療スタッフにご相談のうえ決定してください。