乳がんの「最新治療」とは、一つの新薬を指すのではなく、ホルモン受容体やHER2といったサブタイプ検査の結果に合わせて、手術の順序と薬剤を組み合わせる精密な治療の流れを意味します。サブタイプに応じて術前抗がん剤治療、標的治療、免疫治療、ホルモン治療を異なる形で組み合わせることが、現在の標準となっています。
要点まとめ
- 乳がんはER、PR、HER2、Ki-67という4つの検査でサブタイプを決定し、このサブタイプが治療の順序と薬剤を決めます。
- 韓国の乳がんの5年相対生存率は94.7%(国家がん登録統計 2019–2023)であり、米国SEER基準の女性乳がん5年相対生存率は91.9%(2016–2022)です。いずれも国全体の統計であり、個人の結果を予測する数値ではありません。
- HER2陽性またはトリプルネガティブ乳がんでは、手術よりも先に抗がん剤治療(HER2陽性の場合は標的治療を併用)を行うことが標準として定着しています。
- 4期(転移)乳がんではサブタイプ別に、ホルモン治療+CDK4/6阻害剤、抗HER2標的治療+抗体薬物複合体、抗がん剤治療+免疫治療または抗体薬物複合体の組み合わせが用いられます。
- センチネルリンパ節生検により不要なリンパ節郭清を減らし、全摘術と同時に即時再建が可能なケースも多くあります。
なぜ「サブタイプ」が治療の基準になるのですか?
- 乳がんは一つの病気ではなく、サブタイプによって経過と治療が異なる複数の病気として捉えられています。組織検査の段階でER、PR、HER2、Ki-67の4項目を併せて確認し、これが治療計画の出発点となります。
- ホルモン受容体陽性であればホルモン治療が長く続き、HER2陽性であれば抗HER2標的治療が手術前後・転移段階のいずれにおいても用いられます。トリプルネガティブ(3項目すべて陰性)は抗がん剤治療が中心となり、条件が合えば免疫治療や抗体薬物複合体を追加します。
- そのため、同じ病期であっても自分のサブタイプが何であるかによって、全体の生存率の数字よりも個人別の経過がより重要な意味を持ちます。
最近標準となった「術前抗がん剤治療」とは何ですか?
- HER2陽性やトリプルネガティブ乳がんでは、手術よりも先に抗がん剤治療(HER2陽性であれば標的治療を併用)を行い、腫瘍を縮小させるとともに、薬剤が実際に効いているかを直接確認することが標準となっています。
- こうすることで温存手術の可能性が高まり、手術後に残った腫瘍の程度に応じて続ける薬剤を決定できるため、治療の精密度が高まります。
- 1段階:組織検査とサブタイプ検査。2段階:画像による病期確認(乳房MRI、腋窩超音波、必要に応じてCT・骨スキャン・PET-CT)。3段階:術前抗がん剤(または標的)治療。4段階:手術(温存または全摘、必要に応じて再建)。5段階:術後補助療法(抗がん剤・標的治療・ホルモン治療・放射線治療の組み合わせ)。6段階:定期的な経過観察、という順序で進みます。
転移(4期)乳がんではどのような治療の組み合わせを用いますか?
- 4期では完治よりも、できるだけ長く、楽に腫瘍をコントロールすることが目標となります。ホルモン受容体陽性であればホルモン治療にCDK4/6阻害剤を追加する組み合わせから開始する場合が多くあります。
- HER2陽性であれば抗HER2標的治療と抗体薬物複合体を組み合わせ、トリプルネガティブであれば抗がん剤治療に免疫治療や抗体薬物複合体を組み合わせます。骨転移がある場合は骨を保護する薬剤も併用します。
- 標的治療薬はがん細胞に多く存在する、あるいは変異した特定の分子を狙い撃ちするため、正常細胞への影響が相対的に少ない薬剤であり、耐性が生じた場合は再検査を行い次の薬剤へ移行するのが一般的な流れです。
新しい治療は副作用がより少ないのですか?
- 「ない」のではなく「異なる」と捉えるのが正確です。標的治療は脱毛や強い吐き気は比較的少ない傾向にありますが、下痢や肝機能障害が最も多い副作用であり、薬剤によっては発疹、高血圧、爪の変化が現れることもあります。
- HER2標的治療では心毒性が報告されており、定期的な心機能チェックが必要です。免疫治療は甲状腺・肺・腸・肝臓・皮膚などに免疫関連の炎症が生じることがあり、治療中はもちろん終了後も新たな症状に注意する必要があります。
- ホルモン治療は更年期に似た症状(ほてり、関節のこわばり、腟の乾燥)と骨密度低下を伴うため、数年にわたって骨の検査もあわせて管理します。
よくある質問 — 再建は手術と同じ日に行えますか?
全摘術と同時に即時再建が可能なケースも多くあります。インプラントと自家組織のどちらが適しているかは体型、放射線治療計画、回復期間に関する希望によって決まり、放射線治療が予定されている場合には再建の時期を調整することもあります。
よくある質問 — 現地で受けたHER2検査結果をそのまま使えますか?
多くの場合は参考資料として使用できます。ただしHER2は検査方法と判定基準によって結果が分かれることがあり、薬剤選択を左右する重要な指標であるため、判定があいまいなスコアの場合はパラフィンブロックを用いて再確認することを勧める場合があります。
出典と留意事項
- 本記事は国家がん登録統計 2019–2023(国立がんセンター)、SEER 2016–2022、国家がん情報センター、NCCN患者向けガイドラインの一般的な説明を基に作成しました。
- 本コンテンツは一般的な医学情報の提供を目的としており、個人の状態によって診断・治療方法や結果は異なる場合があります。正確な診断と治療については、必ず医療従事者との相談を通じて決定してください。