前立腺がんにはただ一つの標準治療があるわけではなく、リスク分類(低リスク・中リスク・高リスク・転移)に応じて、積極的監視、ロボット手術、放射線治療(重粒子線・陽子線を含む)、ホルモン療法、標的治療の中から適したものを選ぶのが現在のアプローチです。
要点まとめ
- 韓国の前立腺がんの5年相対生存率は96.9%で、1993〜1995年診断群と比べて37.7ポイント上昇しています(国家がん登録統計2019–2023、国立がんセンター中央がん登録本部)。
- 米国SEER 2016–2022基準の5年相対生存率は98.2%で、いずれも特定の病院ではなく国全体の統計です。
- 韓国はロボット前立腺摘除術の経験が豊富で、2023年から重粒子線治療を開始しています。
- 低リスク群では治療をせず一定間隔で経過を見る積極的監視が標準的な選択肢に含まれる、数少ないがんです。
- 転移段階ではホルモン療法を軸に、抗男性ホルモン剤・抗がん剤を最初から併用する方法が標準になりました。
手術、放射線治療、重粒子線治療はどう選ぶのですか?
- 「より良い方」ではなく「その人に合う方」があります。治療方針は、PSA値、グリソンスコア(がん細胞が正常組織とどれだけ異なるかを2つのパターンで点数化したもの。1〜5のグレードグループに整理されます)と病期を組み合わせたリスク分類に、年齢・予後・併存疾患を加味して決定します。
- ロボット支援根治的前立腺摘除術は限局性前立腺がんの手術として広く用いられており、狭い骨盤内で神経を温存しながら操作できるため、尿失禁や勃起機能の回復に有利とされています。入院期間は概ね5〜7日です。
- 強度変調放射線治療(IMRT)は複数週にわたって分割照射する標準的な放射線治療で、定位放射線治療(SBRT)は照射回数を大幅に減らして終える方法で、リスク分類と前立腺の大きさの条件が合う場合に用いられます。
- 重粒子線治療は韓国で2023年から開始され、限局性前立腺がんではおおむね12回前後で終える方式です。過去の放射線治療歴、人工股関節の有無、腸・膀胱の状態によって適応が分かれます。陽子線治療も放射線治療の一つの方法として検討されます。
転移がある場合、どのような薬物療法を検討しますか?
- 転移性前立腺がんはホルモン療法が治療の軸であり、これにより強力な抗男性ホルモン剤や抗がん剤を最初から併用する方法が標準になりました。
- ホルモン療法が効かなくなった場合は、別系統の薬剤、抗がん剤治療、PSMA(前立腺特異的膜抗原)を標的とする放射性リガンド治療を検討します。骨転移がある場合は骨を保護する薬剤と、痛みを軽減する放射線治療を追加します。
- BRCAなどDNA修復遺伝子に変化がある進行前立腺がんでは、それに対応した標的治療薬を検討します。標的治療は検査結果なしには選択できず、変異がなければ選択肢になりません。
- ただし転移段階は長期間コントロールすることが目標であり、完治を目指す段階ではありません。
診断から治療方針決定まではどのような順序で進みますか
- 第1段階、PSA血液検査値が高い、または直腸指診で異常がある場合は、まず前立腺MRIを確認します。
- 第2段階、MRIで疑わしい部位が見つかった場合は、その部位を狙ったMRI融合生検でグリソンスコアとグレードグループを得ます。
- 第3段階、MRIで前立腺被膜への浸潤の有無を確認し、リスクが高い場合は骨シンチグラフィまたはPSMA PETで転移の有無を確認します。
- 第4段階、PSA・グレードグループ・病期を組み合わせてリスク分類を決定し、積極的監視・手術・放射線治療・ホルモン療法のいずれかの方向性を定めます。
- 第5段階、治療後は一定間隔でPSAを測定し、再発の有無を確認します。
よくある質問 — 放射線治療を受けると性機能は保たれますか?
放射線系治療は手術と比べて性機能の変化が遅く、徐々に現れる傾向があるとされています。ただし個人差が大きく、ホルモン療法を併用すると影響が変わるため、保証できるものではありません。
よくある質問 — 骨に転移していても治療できますか?
転移性前立腺がんはホルモン療法を軸に、長期間コントロールする治療が可能です。最初から薬剤を組み合わせる方法が標準になっており、骨を保護する薬剤と痛みを軽減する放射線治療を併用します。ただし完治を目指す段階ではなく、コントロールできる期間には個人差があります。
出典および注意事項
- 本記事は、国家がん登録統計2019–2023(国立がんセンター中央がん登録本部)、米国SEER 2016–2022、国立がん情報センターおよびNCCN患者向けガイドラインを根拠に作成しています。
- 本コンテンツは一般的な医学情報の提供を目的としており、個人の状態により診断・治療方法および結果は異なる場合があります。正確な診断と治療については、必ず医療従事者にご相談のうえ決定してください。