大腸がんは病期や状況によってMSI/MMR、RAS、BRAF、HER2といったマーカー検査が必要となり、特に進行・転移段階にある場合や家族歴がある場合には、治療方針を決めるうえで重要な役割を果たします。すべての患者さんに一律に必要というわけではありません。
要点まとめ
- 大腸がんにおけるMSI/MMR、RAS、BRAF、HER2マーカー検査は、進行・転移大腸がんで薬剤を選択するために行われます。
- 家族歴がある場合や若年で診断された場合には、遺伝性大腸がんかどうかを確認する別の検査をお勧めすることもあります。
- RAS野生型にはEGFR標的治療薬、BRAF変異やHER2陽性にはそれに合わせた薬剤を組み合わせ、MSI-Highの場合は免疫療法が特によく効くことが知られています。
- 韓国における大腸がんの5年相対生存率は75.6%です(国家がん登録統計 2019〜2023年、National Cancer Center Korea)。
- バイオマーカー検査は遺伝する突然変異を調べる遺伝子検査とは異なる概念で、がん細胞自体の変化を見る検査です(米国国立がん研究所 NCI)。
遺伝子検査(マーカー検査)とは何で、なぜ受けるのか
- マーカー検査とは、がん細胞の遺伝子・たんぱく質の変化を調べ、どの薬剤が効果的かを判断する際の参考にする検査です(NCI)。大腸がんでは、RAS、BRAF、HER2、MSI/MMRが代表的な項目です。
- 同じ大腸がんであっても、このマーカーの結果が異なれば効く薬は全く変わってきます。RASが野生型であればEGFR標的治療薬を検討し、BRAF変異やHER2陽性であればそれに合わせた薬剤を組み合わせます。MSI-High(マイクロサテライト不安定性が高い場合)は、免疫チェックポイント阻害薬が特によく効くことが知られています。
- この検査は全身に治療薬を使用する進行・転移大腸がんで特に重要であり、早期大腸がんでは手術のみで治療が完結する場合が多いため、必ずしも必要というわけではありません。
遺伝性大腸がん検査とはどう違うのか
- マーカー検査と遺伝性大腸がん検査は異なる検査です。マーカー検査はがん細胞自体の変化を見るものであり、遺伝性大腸がん検査は家族に受け継がれる可能性のある生殖細胞系列の突然変異を調べる検査です(NCI)。
- 家族歴がある場合や若年で大腸がんと診断された場合には、遺伝性大腸がんかどうかを確認する検査をお勧めすることもあります。結果によって家族の検診開始年齢や間隔が変わることがあるため、あらかじめ家族歴を整理しておくと役立ちます。
検査はどのような順序で進められるのか
- 第1段階:大腸内視鏡検査で病変の位置と大きさを確認し、組織検査(生検)を行います。
- 第2段階:腹部・胸部CT、直腸がんの場合は骨盤MRIで転移や浸潤の範囲を確認します。
- 第3段階:進行・転移段階と判断された場合、組織または血液でMSI/MMR、RAS、BRAF、HER2マーカーを検査します。
- 第4段階:家族歴や若年発症など該当する所見があれば、遺伝性大腸がん検査を追加で検討します。
- 第5段階:検査結果を総合し、手術、化学療法、分子標的治療、免疫療法のうち適切な組み合わせを決定します。
よくある質問 — 現地で受けた検査結果をそのまま使えますか?
ほとんどの場合そのまま参考にすることができます。ただし検査方法や基準は機関によって異なるため、薬剤選択の決め手となるマーカーについては、組織スライドやパラフィンブロックで再確認する場合があります。検査を受けた日付や、検体が原発腫瘍なのか転移部位なのかも確認が必要な情報です。
よくある質問 — マーカー検査をしていないと分子標的治療を受けられませんか?
分子標的治療薬は該当する変異が確認された場合にのみ効果があるとされているため、検査結果なしに分子標的治療を選択することはありません。該当する変異がない場合は、分子標的治療の代わりに細胞障害性抗がん剤や免疫療法、手術・放射線治療が基準となります。
出典および注意事項
- 本稿は「大腸がん、分子標的治療、治療前に確認すべきことノート」(国家がん登録統計 2019〜2023年・National Cancer Center Korea、国家がん情報センター、NCCN患者向けガイドライン、米国国立がん研究所 NCI)を基に作成しました。
- 本コンテンツは一般的な医学情報の提供を目的としており、個人の状態によって診断・治療方法や結果は異なる場合があります。正確な診断と治療については、必ず医療従事者にご相談のうえ決定してください。